| ● 扇柳 トール「はなのあめ」 ● |
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ホームページ紹介文より 「アジアとヨーロッパを結ぶケルティック風味アンサンブル "Hard To Find"のマルチインストゥルメンタリスト、 扇柳トールによるソロ作品は、wooden flute,wooden whistleの演奏を中心としたより”和”を意識した作品に なっている。また、Hard To Findのメンバーをはじめ、 佐々木幸男(vo)、河井英里(vo)、嵯峨治彦(morin khuur)、木村林太郎(irish harp)ら多彩なゲスト陣が 彩りを添えている。」 |
しんみり心に響く、そして聴いた後に暖かい満足感を残してくれるアルバム。
本作品で扇柳トール氏は、ベーム式木製フルートや木製ホイッスルを中心に、弦楽器やシンセサイザー
をも駆使しながらアコースティックなサウンドを作っている。
この作品を聴いたあと、私はとてもやさしい気持ちになった。それはたとえば、ふとしたときに小さいころの
記憶にある、まだ若かった親や兄弟、幼い友達とのささいなを会話や出来事、駄菓子屋や道草した
こと を思い出し、そして懐かしくなっても、もうそれは手の届かないところにあることを悟ったときの切ない
気持ち、同時に小さい頃、自分がとても大切にされてきたことを知り、胸が暖かくなるような気持ち。
それは、そっと心に語りかけるような寂寥感と、それをこえる優しさに包まれている。
北海道、札幌を拠点に、プロフェッショナルとして長きに渡り活動を続けているHard to findの
メンバーとして北海道はもとより日本各地でも演奏活動を行う一方、独自の音楽性を生かして
様々なジャンルで活躍している扇柳氏の初めてのソロアルバム、それが本作品「はなのあめ」だ。
このCDには、氏の作曲を中心に、日本の民謡2曲も収録している。
オリジナル作品はどれも心に淡々と訴えかけるような音で、それはスッとしみこんでいく。
押し付けがましいことなく、とても説得力に満ちている。民謡、これもまた素晴らしく、
ゲストに歌手の河井英里さんを迎え、新鮮な響きで美しいヴォーカルを聴かせてくれる。
他に馬頭琴奏者の嵯峨氏やヴォーカルの佐々木氏を迎えたオリジナルもすばらしい。
私はHard to findというバンドを知ったころから、もう5年くらい、帰省するたびにお会いさせて頂いている。
時にはリーダーの小松崎氏のご自宅でセッションに参加させていただいたり、ライブで共演させて
頂いたりとお世話になっている。彼らのことを、私は心底うらやましいと思う。
音楽が、気負うことなくとても自然に生活の中に溶け込んでいるのだ。
それは、アイルランドで見た、会話するように人々と音楽を分かち合うこと。場所は違えど、日本にも
こういう音楽のありかたがあったのだ。素晴らしい仲間と、酒と食事を、音楽を、幸福を、分かち合う。
そして、土地に感謝し、土地に根ざした音楽を作っていく。
そんななかからこの作品は生まれたのだろう。
本作品の題名は、俳句の春を表す季語なのだそうだ。
花は桜、桜は死と再生のサイクルを象徴する花であれば、春の雨は桜をちらせてしまう冷たい雨なのだろうか。
新たな命へ向けられた子守唄や、「彼岸」といった作品が収録されている本作は、そんな生死の
リズムをも、とても優しい眼差しで受け入れ、美しく歌っているように思える。
そして、こんな風に自然に人生を、暮らしを、死を、受け入れることができたら、どんなに素敵だろうと
思うのだ。
扇柳トール氏が長年をかけて思い描いてきた風景、それは、どの世界のものでもなく、そして
そしてだれにもある心の原風景なのだ。
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